基礎生物学研究所、鹿児島大学、(株)サントリーグローバルイノベーションセンターが、遺伝子導入により共同開発した新色のアサガオ。原種のアサガオの花色は青色だが、アサガオの栽培と品種作りが盛んになった江戸時代には、赤、桃、紫、茶、白などの多彩な花色や、変化朝顔などの様々な花形の品種が育成された。鮮やかな黄色のアサガオもその頃に育成されており、江戸時代後期の「朝顔図譜」などに数種類が描かれているが、その後途絶えて姿を消したため、かつて「青いバラ」がそうだったように「幻の花」とされてきた。東野圭吾の「夢幻花(むげんばな)」や梶よう子の「一朝の夢(いっちょうのゆめ)」などの小説でも、実在しないものとして描かれている。一般に、キンギョソウなどの黄色い花にはオーロンという色素が大量に含まれるが、アサガオにはほとんどない。そこで研究グループは、薄いクリーム色の色素カルコンを生成するアサガオ「54Y系統」の培養胚に、キンギョソウ由来でカルコンからオーロンを合成する2種類の遺伝子を組み込んだ。その結果、「54Y系統」でもオーロンが生成されるようになり、黄色のアサガオが再現された。なお、この操作により、もともと「54Y系統」で見られた花弁の縮みが改善し、きれいに咲く花が多くなるという副次的効果も生まれた。