頭部に装着し、カメラのファインダーのように、のぞきこむようにして使用するディスプレーの総称。両眼を覆い、疑似的に、数メートル先に数十型の大型映像が見えるなど、主に映画鑑賞を想定したAV用途のもの、片眼のみに情報を表示し、ウェアラブルコンピューター(wearable computer)のディスプレーを想定したものに大別される。HMDの原型となる製品は、1990年代の半ばから登場しており、ソニーの「グラストロン」やオリンパスの「アイトレック」が先陣を切ったが、当時は大きくて重いバッテリーや映像処理装置が別筐体(きょうたい)であったこともあり、扱いづらく、解像度が低いうえ、高価であるなど、ニーズが少なく、いずれも姿を消していった。その後、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc Associationの商標)によるハイビジョン画質と3D映像の普及により、高品位な3D映像を実現したソニーの「HMZ」シリーズが、ホームシアター用途として人気を集めている。一方、業務用途では、工事現場や精密機器の開発および製造現場などで、ハンズフリーで情報を得たり、視力を補助する新しいディスプレーとして着実に浸透しつつある。今後、携帯電話による映像配信やウェブ閲覧なども高精細化し、個人が受け取る情報量は増える傾向にあり、それにともなってHMDの急速な普及が見込まれる。市場では、発売間近とされるグーグルの「グーグルグラス(Google Glass)」が話題である。