視聴者を複数のスピーカーで取り囲んで立体的な音響表現を行うサラウンド音声において、より音の移動表現を明確にする新技術が登場し、総称して「オブジェクト・オーディオ」と呼ばれている。たとえば、従来の5.1ch(「正面」と「前左右」「後左右」の五つに加え、低音用のスピーカーで視聴者を取り囲む方式)のサラウンド音声では、制作時に視聴者を取り囲む五つのサテライトスピーカーを想定し、音を五つのチャンネルに振り分けて収録していた。しかしながら、映画館でいえば、その大きさはさまざまで、スピーカーの設置数も異なることから、制作者の意図した表現があいまいになってしまうケースもあり得る。オブジェクト・オーディオでは、主に効果音などの「移動する音」に対して座標情報をもたせておき、再生する現場でスピーカーの数に合わせてレンダリング(生成)を行うのが特長となる。そのため、特に大きな映画館で大勢の観客をたくさんのスピーカーで取り囲むような状況であっても、どの席でも明瞭な音の移動効果を体感できる。主な方式としては、ドルビーの「Dolby Atmos」とDTS社の「DTS:X」の2種類があり、どちらも天井スピーカーを擁して従来の水平方向に加え、垂直方向の立体感も再現が可能になった。オブジェクト・オーディオは、ブルーレイソフトにも収録が可能で、映画館に限らず、ホームシアターでも利用できる。