燃料電池車(FCV)に水素を供給する施設のこと。工場で製造した水素をステーションに輸送し、圧縮水素または液体水素として貯蔵・供給するオフサイト型と、水素ステーション内で原料(灯油、LPG、天然ガス、メタノールなど)を貯蔵し、これを改質して水素を製造しながら供給するオンサイト型の2タイプがある。2011年1月、トヨタ、日産、ホンダの自動車メーカー3社と、JX日鉱日石エネルギー、出光興産、岩谷産業などのエネルギー関連会社9社は共同で、FCV国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明を発表。15年までにFCV量産車を4大都市圏(首都圏、中京、関西、福岡)を中心とする国内市場に導入し、水素ステーションは同年度までに100カ所程度を先行整備。これを25年までにはFCV200万台、水素ステーション全国1000カ所程度まで拡大させるとした。この計画を受けて、14年7月には、岩谷産業が兵庫県尼崎市に国内初の商用水素ステーションを開設。JXも同年12月に神奈川県海老名市で1号店をオープンさせた。また、JXは18年度をめどに現在の5カ所から100カ所程度まで増設する計画も発表している。一方同年9月には、ホンダと岩谷産業が提携して、水素製造から充填システムまでをパッケージ化した世界初の「スマート水素ステーション」を開発。現時点で一基当たり約4億~5億円かかる設置コストを、将来的にはその10分の1程度まで減らすことを目指すという。しかし、トヨタのFCV「MIRAI」が発売された14年12月時点で、15年度内に開設が予定されているのは、JXが約40カ所、岩谷産業が約20カ所などとなっており、当初の予定を下回っている。一方、海外の動向としては、燃料電池実用化推進協議会(Fuel Cell Commercialization Conference of Japan ; FCCJ)の報告によれば、ドイツでは15年までに50カ所、アメリカのカリフォルニア州でも、15年までに68カ所を整備する計画だという。また、韓国では15年までに43カ所、20年までに168カ所を設置するとしている。水素ステーションはFCVを普及させるために不可欠なインフラであることは間違いなく、今後もその動向が注目される。