「劇画」という名称の名づけ親、辰巳ヨシヒロが描く、マンガ形式の回想録。大阪は心斎橋近くにある光伸書房(日の丸文庫)に集う若きマンガ家たちの生活を、短編誌の編集の舞台裏を含めリアルに描写している。辰巳ヨシヒロ、さいとう・たかを、桜井昌一、松本正彦などの若者は、手塚治虫に大きな影響を受けつつも、それとは異なった点をアピールして、世の中に打って出ようとする。生活に密着した素材とリアルな描法、それを辰巳は「劇画」と名づける。彼らは同社の『影』という短編誌の創刊にかかわり、最終的に東京への進出を果たす。それまでのできごとを詳細に描いている。もとはマンガ専門店「まんだらけ」の目録誌に連載されたもの。2009年には、よしながふみの「大奥」とともに第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。単行本は青林工藝舎より、上下2巻で08年末に出版された。カナダでは09年4月に英語版も出版されたが、以降何カ国か海外での翻訳出版が予定されている。