江戸幕府の内側を描いた、よしながふみによる歴史マンガ。ただし、設定が奇抜。男だけがかかる伝染病により、江戸時代には極端に男性の数が減少し、とりわけ若い元気な男子が乏しいという設定になっている。遊廓でも男が女の客をとるというふうに立場が逆転。ある日旗本の長男である青年が、大奥にお勤めに上がる。のちに女将軍家光となる千恵(ちえ)は、その青年有功(ありこと)をことのほか愛し、捨蔵、玉栄など他の若い男と床を同じくしながらも、ずっと有功を恋人として愛し続ける。その結果有功は、のちに「お万の方」として、唯一側室から選ばれた大奥総取締役にまで登りつめる。しかし、女将軍の家光は、27歳で死去してしまう。その家光と捨蔵との間にできた娘千代姫が、つづいて四代将軍家綱となる。有功はのちに出家して生涯を終えることになる。物語は、以降の歴代将軍の話につながっていく。江戸の大奥を舞台に、男女を入れ替えた歴史を描く異色作。「MELODY」(白泉社)に2004年8月号から掲載中。09年、「劇画漂流」とともに第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。