完全雇用の下で貯蓄と投資を一致させる実質金利のこと。現実の名目金利から期待インフレ率(予想物価上昇率)を差し引いて計算される実質金利が自然利子率に一致すれば、経済・金融に対して引き締め的でも緩和的でもないという意味で中立金利とも称される。長期的にみて自然利子率は潜在成長率にほぼ一致するとみなされ、日本銀行は、日本経済の潜在成長率が低下していることなどを反映して、自然利子率も趨勢的に低下しており、黒田東彦日本銀行総裁の就任時以降の時期においては概ね0%近傍にあると推計している。したがって、黒田総裁の下での日本銀行が金融政策を緩和的に運営するためには、実質金利をマイナスにする必要があり、名目金利がすでに0%まで低下した状況では、(1)期待インフレ率を上昇させる、ないしは、(2)名目金利自体をマイナスにする、ことが必要であったということになる。前者が2013年4月に異次元緩和政策、後者が16年1月にマイナス金利政策(→「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」)をそれぞれ導入したことの理由付けである。