信託契約(→「信託」)において受託者が委託者に対して負うさまざまな義務。もっとも基本的なものとして、(1)善良な管理者としての注意をもって事務処理をする義務、(2)受益者のために忠実に事務処理をする義務、(3)委託された財産を受託者の固有財産等と分別して管理する義務、があげられる。顧客(委託者)から財産等の運用を任された金融機関(受託者)は、顧客の利益を最優先に考えて行動する義務を負うことを意味している。金融庁が平成27事務年度(2015年7月~16年6月)の「金融行政方針」で初めて打ち出した「顧客本位の業務運営」は、受託者責任の考え方に基づいて、金融機関に対して顧客の利益を最優先した業務運営を求めている。具体的には、投資信託や貯蓄性保険などを販売する場合の手数料や間接費用(保険商品の銀行窓口販売で銀行に支払われる手数料など)を顧客にきちんと説明することや、顧客にふさわしい商品が提供されるよう顧客と金融機関の間で利害が対立する場合(→「利益相反」)の具体的な管理方針を定めておくこと、などである。金融庁は、平成28事務年度「金融行政方針」においても「顧客本位の業務運営」を施策の柱の一つとして掲げている。