「アベノミクス」による積極的財政政策と黒田東彦総裁の下で日本銀行が実施してきた異次元緩和政策の結果として、資金循環表(→「資金循環」)に現れている異常な現象。2017年3月末の金融資産負債残高表を4年前と比較すると、(1)政府部門(除く社会保障基金)が発行するネット国債残高は167兆円増(696兆円→863兆円)、(2)日本銀行が保有する国債残高は293兆円増(93兆円→386兆円)、(3)預金取扱金融機関が保有する日銀当座預金は270兆円増(54兆円→324兆円、ほぼ同額の超過準備増)、といずれも異常な増加となっている。一方、同期間における家計部門のネット金融資産(除く保険・年金)は、124兆円増(849兆円→973兆円)であるが、その過半は株式・投資信託の増加(203兆円→281兆円)による。日銀の保有国債を減らして、その見合いで超過準備を解消する出口戦略(→「テーパリング」)の前途多難がうかがわれるが、より深刻なのは、財政破綻を担保するとされている家計部門の金融資産1800兆円が、ネットベース(除く保険・年金)ではネット国債発行残高863兆円を110兆円(「アベノミクス」の恩恵が大の株式・投資信託増加額78兆円を除くと32兆円)上回っているに過ぎないこと。「異次元緩和政策」による財政規律喪失は、いずれ財政破綻につながる危険性大である。