サブプライム住宅ローンの問題を契機に経営悪化に陥ったアメリカ金融業界が、未曾有のスピードと規模で再編を遂げたこと。サブプライム住宅ローンの貸し出し業務に傾注していたワコビア(ウェルズ・ファーゴが買収)やワシントン・ミューチュアル(JPモルガン・チェースが買収)といった銀行グループはもとより、近年レバレッジ効果を高めて、サブプライム住宅ローンの証券化を始めとするOTD型モデルの金融ビジネスに注力してきた大手証券会社グループ5社も、多額の損失計上と流動性確保への悪影響に直面し、その結果、ベアー・スターンズはJPモルガン・チェースに、メリルリンチはバンク・オブ・アメリカに、事実上救済買収された。また、リーマン・ブラザーズは経営破綻し、その北米部門はイギリスのバークレイズ・グループが買収し、アジア・パシフィック部門とヨーロッパ・中東部門の人員・事業インフラは日本の野村グループが継承した。さらに、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは、グループ持ち株会社を銀行持ち株会社に転換するに至ったが、これは史上空前の金融危機の中で、アメリカの中央銀行FRS(連邦準備制度)によるセーフティ・ネットの庇護下に入ることを狙っての戦略と考えられる。その後、2008年10月にアメリカ政府は、こうした金融機関などに対して、最大7000億ドルの資本注入を可能とする金融安定化法(緊急経済安定化法)を成立させ、一部実行した。09年1月にはシティグループが傘下証券会社スミス・バーニーをモルガン・スタンレーへ事実上売却するなど、再編の動きは続いている。