日本では、新卒後直ちに就職した企業で定年まで雇用の安定性が保障されることをいい、おもに大企業でこの傾向が強い。ただし、大企業でも、現在の一般的な定年年齢である60歳まで勤め続ける人々はそれほど多くなく、50歳前後で子会社や関連会社に出向・転籍する傾向が強いことから、むしろ長期雇用慣行と呼ぶ方がふさわしい。終身雇用慣行の一般的な評価については、好況時と深刻な不況時とで異なる傾向がある。例えば、多くの企業が高い成長を維持している好況時には、長期雇用慣行は、従業員のやる気を向上させたり効果的な情報共有を行うために不可欠な慣行であるとそのメリットが高く評価される。ところが、深刻な景気後退のために生産量が激減してくると、逆に過剰雇用や人件費硬直化といったデメリットが強調されがちとなる。通常、多くの企業は、こうした不況時のマイナス要因をできるだけ抑えるため、配置転換を実施したり、広範な教育訓練機会を提供することによって、基幹労働力の柔軟性確保に努力してきた。ただし、不況が慢性化した1990年代半ば以降、将来の見通しの不透明化や競争の激化にともない、大幅な人員調整を行う企業が急増した。さらに、パートタイマーや契約社員のみならず、企業に雇用責任が直接及ばない派遣労働者(→「労働者派遣」)や、構内請負労働者(→「告示37号」)を活用する傾向が顕著になった。