会計検査院検査官や人事院人事官、日銀総裁と副総裁、NHK経営委員、各種審議会委員など、内閣や首相、大臣による任命に国会の同意を要する人事は、時期により変動しているがおよそ35機関230人程度にのぼり、従来は与党が了承すればそのまま衆議院(衆院)と参議院(参院)でも同意されていた。しかし参院で否決されれば、法案のように衆院の3分の2で再可決して成立させることができないことから、2007年以降のねじれ国会では、野党の了承も必要になり、07年秋の第168回国会で、政府がまず衆参の議院運営委員長と与野党理事で構成する「同意人事に関する会議」に人事案件を提示するというルールが定められた。この場合、事前に人事が報道されたときは「原則として当該者の提示は受け付けない」とされた。同国会では、このルールにより政府が提示した14機関28人のうち3人について野党は参院で同意を与えなかった。09年の政権交代後、10年に再びねじれ国会となり、今度は与党時代に民主党に苦杯をなめさせられた自由民主党(自民党)と公明党が民主党政権の提案する国会同意人事に異論をはさみ、国会同意人事の停滞が続いた。12年に政権に復帰した自民党・公明党連立の第2次安倍晋三政権は、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、経済成長を3本の矢とするアベノミクスでデフレから脱却することを宣言し、期待インフレ率の上昇による円安効果で輸出企業の急速な業績回復を実現した。折しも日銀総裁の任期が満了し、安倍首相の大胆な金融政策に消極的とされる白川方明総裁の後任人事に大きな注目が集まったが、総選挙での自公の圧勝とアベノミクスへの国民の期待から、参院で過半数を握る野党も安倍首相の政策に同調する黒田東彦の総裁就任を承認した。なお、事前に人事が報道されたときは、当該者の提示を受け付けないとする事前報道ルールは、13年2月衆参の議院運営委員長が正式に撤廃で合意した。