議員定数を複数の地域に人口に比例して配分する際に用いられる方法の一つ。第6代アメリカ大統領のジョン・クインシー・アダムズが下院議員であったときに、下院議員定数を州別に配分する方式として提案したことが名称の由来である。日本では2020年国勢調査の速報が公示されて以降、衆議院小選挙区選出議員の都道府県への定数配分と衆議院比例区選出議員の比例ブロックへの定数配分に用いられることになった(→「衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(2016)」)。この方式では、まず総人口を総議員定数で割った数(標準除数)を求める。この標準除数で各地域の人口を割り、各地域の議員定数配分の基準値を求める。このとき、この基準値は小数点以下を含む値であるため、議員定数を配分するためには整数値にする必要が生じる。ここで整数部分をまず分配し、残りを小数点以下の大きい順に配分すると最大剰余方式となる。一方、アダムズ方式では各地域の議員定数配分基準値を切り上げることで整数とする。ただし、そのままでは各地域の議員定数配分の合計は総議員定数を超える。そこで、各地域の議員定数配分の合計が総議員定数に一致するように、除数を標準除数の値から大きくした適切な除数を見つけて議員定数配分基準値を計算し直す。区画審設置法ではこの除数を基準除数と呼称している。なお、以上の手順のうち基準値を切り捨てるとジェファーソン方式となる。同じ除数を用いて議員定数を配分した場合、アダムズ方式はジェファーソン方式に比べ各都道府県当たり1議席ずつ多くなる。また、ジェファーソン方式の配分はドント式の配分に一致する(→「ドント式」)。したがってアダムズ方式による配分は、各都道府県に議員定数を1ずつ配分した後に、残りの議員定数をドント式で配分するのと同じである。アダムズ方式は各地域の議員一人当たりの人口の最大値が最も小さくなるように議員定数を配分するため、一票の格差は抑制される。