労働基本権制約の代償措置として、人事院が毎年、国家公務員の適正な給与の改定について国家と内閣に対して行う勧告。給与据え置きなど法改正の必要がない場合は、勧告せず報告になる。
2009年8月の勧告は、(1)公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(-0.22%)を解消するため、俸給月額の引き下げ、自宅に係る住居手当の廃止、(2)期末・勤勉手当(ボーナス)の引き下げ(-0.35月分)、(3)超過勤務手当等について、時間外労働の割増賃金率等に関する労働基準法の改正を踏まえた改定。
10年8月の勧告は、(1)月例給、ボーナスともに引き下げ、平均年間給与は-9.4万円(-1.5%。月例給については、50歳代後半層を重点的に引き下げ)、(2)公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(-0.19%)を解消するため、月例給の引き下げ改定、55歳を超える職員の俸給・俸給の特別調整額の支給額の一定率減額、俸給表の引き下げ改定、(3)期末・勤勉手当(ボーナス)の引き下げ(-0.2月分)。
11年9月の勧告は、月例給は引き下げ改定、ボーナスは改定見送り。平均年間給与は-1.5万円(-0.23%)で3年連続で引き下げ。期末・勤勉手当(ボーナス)は、岩手県、宮城県および福島県について調査していない中で、国家公務員の特別給の改定を行うべきと判断するに至らず、改定は見送りとなった。なお、11年6月3日に内閣が国会に提出した「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」に対して、人事院総裁は、勧告が労働基本権制約の代償措置として国家公務員に対し適正な給与を確保する機能を有するものであるという見解に基づき、「遺憾の意」を表明した。
12年8月の勧告は、給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置を勘案し、月例給、ボーナスとも改定なしであった。
13年8月の勧告は、12年と同様、月例給、ボーナスとも改定なしで、給与水準の改定のための勧告を行わなかった。
14年8月の勧告は、月給を平均0.27%(1090円)を引き上げ、ボーナス(期末・勤勉手当)も0.15月分引き上げるとし、いずれも7年ぶりのプラス改定となった。同時に民間給与が低い地域での官民較差を是正するため、15年度から基本給を平均2.0%引き下げることなどを柱とする「給与制度の総合的見直し」も求めた。