民主党政権は成立の当初から国家戦略室を設けたが、必ずしも当初に企図したことが実現したわけではなかった。そこで、野田佳彦首相は内閣組織後ただちに、「税財政の骨格や経済運営基本方針等の国家の内外にわたる重要な政策を統括する司令塔並びに政策推進の原動力として、総理のリーダーシップの下、産官学の英知を結集し、重要基本方針の取りまとめ等を行うとともに、国の未来へ新たな展望を提示するため、中長期的な国家ビジョンの構想を行う」(2011年10月21日閣議決定)ために国家戦略会議を設置した。メンバーは、総理(議長)、官房長官と国家戦略担当大臣が副議長、そして、総務大臣、外務大臣、財務大臣、経産大臣のほか、白川方明(日本銀行総裁)、岩田一政(日本経済研究センター理事長)、緒方貞子(国際協力機構理事長)、古賀伸明(日本労働組合総連合会長)、長谷川閑史(武田薬品工業社長)、米倉弘昌(日本経団連会長)である。戦略会議は10月28日に最初の会合を開き、日本再生基本戦略を当面のテーマとすることとした。12月12日に次年度予算に関する基本方針をまとめ、同22日には、今後の経済成長の基本的方向と主要施策を盛り込んだ「日本再生の基本戦略」を策定した。重点テーマとして東日本大震災・原発事故からの復活を挙げ、11~20年度の平均成長率を「名目3%程度、実質2%程度」とする努力目標が掲げられている。また、分科会として「エネルギー・環境会議」を置き、エネルギー政策や地球温暖化対策などを網羅する「革新的エネルギー・環境戦略」の策定に向けた議論をすることとした。12年1月の野田内閣改造で岡田克也副総理が副議長として新たに参加することになったほか、1月には、「フロンティア分科会」を下部組織として設置することにし、座長の大西隆東京大学教授(都市工学専攻)ら11人の委員を決定した。分科会は、経済や科学技術など幅広い分野について、2050年までを視野に入れて国の中長期的展望を検討し、5月に中間報告をまとめることを決めた。分科会の下には「繁栄」「幸福」「叡智」「平和」の四つの部会を設置した。