首相への取材は、森喜朗首相(2000年就任)までは、首相の記者会見のほかに、総理番記者が首相官邸や国会の廊下を歩きながら話を聞くということがあった。しかし、小泉純一郎首相(01年就任)になって、この慣例を廃止し、原則1日2回、首相が立ち止まって取材に応じるようになった。これがぶらさがり取材である。小泉首相のぶらさがり取材では、昼はカメラなし、夜はカメラありのスタイルが定着した。小泉首相以後の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の自民党内閣の首相だけでなく、民主党の鳩山由紀夫首相も、小泉首相のぶらさがり方式を踏襲してきたが、菅直人首相は取材を1日1回に減らし、さらに、東日本大震災以後は、公務多忙を理由にぶらさがり取材はなくなった。そして、野田佳彦首相も、その後の、自民党政権の安倍首相もぶらさがり取材を拒否している。ぶらさがり取材は、小泉首相時代のように「ワンフレーズ・ポリティクス」の源泉ともなったが、多くの場合、舌足らずや誤解をまねく発言がなされやすく、首相の真意が伝わりにくいという難点があった。