国際連合(国連 UN)の強制行動には、経済的措置と軍事的措置とがある(国際連合憲章第7章)。これらは平和を破壊したり侵略を行った国に対して、力による集団的制裁を行う平和強制の典型である。国連憲章第7章39条によると、安全保障理事会(安保理)は、ある事態を「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為」と決定したときは、41条のもとで経済制裁などの非軍事的措置をとることができる。この措置で不十分な場合には、42条のもとで、「空軍、海軍又は陸軍の行動」、つまり軍事的措置をとることができる。このような軍事行動のための国連軍は、憲章43条に従って加盟国から提供されることになっているが、冷戦期の大国間の対立のために、この種の国連軍が創設された例はない。実際に強制行動を必要とする事態が発生した場合、安保理は、軍を提供する意思のある国々が派遣する部隊によって構成された多国籍軍の行動に許可を与えるという形で対応してきた(例・1991年の湾岸戦争)。平和強制は、国連軍以外にも、安保理の許可を得て、北大西洋条約機構(NATO)などの地域的機構によっても行われることがある。