2009年4月5日、06年の核実験時に科された国連安全保障理事会制裁決議1718に違反するとの事前警告を無視し、人工衛星であるとしてミサイルを発射し、それに対して科された国連安保理議長声明にさらに反発する形で、5月25日、北朝鮮はついに二度目の地下核実験を実施した(→「北朝鮮の核実験(2006年)」)。こうした核実験実施の背景には、一方で、金正日国防委員長の健康問題で揺れ動いた国内の動揺を抑え後継体制への移行を円滑にするための実績作り、他方で、核抑止体制を確立することで対米交渉に臨む北朝鮮の立場を強化するという、国内外に向けたねらいがあったと見られる。この核実験に対して、国連安保理は全会一致で決議1718の内容をさらに強化する内容の制裁決議1874を採択した。この制裁決議は国連憲章7章41条に基づく措置を取るということで武力行使は排除されているものの、北朝鮮船舶の貨物検査や金融制裁のさらなる強化が盛り込まれている。日米韓などの各国は、これに加え、独自の制裁も行う。北朝鮮は、こうした核実験を「自国の自衛的な核抑止力を強化する」ためのものであるとして正当化し、国連安保理の制裁に対して、抽出した全プルトニウムの兵器化、ウラン濃縮への着手、制裁行為への軍事的対応などを骨子とする外務省声明を発表し、緊張は一挙に高まった。しかし、それ以後、予想された続けざまの核実験などは行われず、次第に核問題は交渉局面に入っている。ただし、あくまで核の放棄意思を6者協議や米朝交渉の進展の前提条件と考える日米韓などと、核放棄の意思を明確にせず、6者協議への復帰を米朝平和協定の締結、さらには米朝国交正常化への布石と考える北朝鮮との間には思惑の違いが存在し、不透明な状況が依然として続く。(→「米朝交渉」)