2010年11月23日、韓国が黄海上の南北軍事境界線と定める北方限界線(NLL)付近の韓国領延坪島の軍施設を狙って北朝鮮軍が海上から砲撃し、これに韓国軍が応戦し砲撃戦になった事件で、韓国側は軍人2人、民間人2人が死亡。1953年の朝鮮戦争停戦協定に伴って北緯38度線で停戦ラインが引かれたが、当時の海軍力の差を反映して、黄海上では、停戦ラインよりも北側に南北軍事境界線が引かれ、これが北方限界線となった。北朝鮮は、いったん、91年の南北基本合意書で、北方限界線を順守する姿勢を示したが、その後、合意を覆し、現行の北方限界線は認めず独自の軍事境界線を主張した。10年に入り、黄海上では南北の砲撃が繰り返されるなど緊張が高まっていたが、ついに11月23日北朝鮮による延坪島砲撃事件が勃発した。哨戒艦「天安」沈没事件では北朝鮮の犯行に懐疑的であった韓国国内の一部世論も、砲撃事件を契機に、対北朝鮮強硬論に旋回し、国防相が更迭された。一方、中国は北朝鮮をかばう姿勢を示し、北朝鮮の意向に従って6者協議再開による緊張緩和を主張したが、逆に、日米韓は外相会議を開催して、北朝鮮に対して砲撃事件への謝罪だけでなくウラン濃縮の中止を求めるなど結束を固め、特に北朝鮮に影響力を持つ中国の積極的な介入を求めた。また、今度は黄海上で米韓合同軍事演習を実施し、中国に対する圧力を強めた。北朝鮮は、11年の新年の共同社説で無条件での南北対話を呼びかけるなど融和的姿勢を示すが、日米韓は、北朝鮮の非核化の意思の明確化などを条件として掲げ、6者協議再開をめぐるにらみ合いが続く。