2002年9月の小泉純一郎首相(当時)第1次訪朝に伴う日朝平壌宣言、04年5月小泉第2次訪朝による日本人拉致問題被害者家族の帰国、08年8月福田康夫政権における拉致再調査と制裁一部緩和の実務者合意、これ以後、6者協議も開催されず、北朝鮮の核ミサイル開発が既成事実化していく中で、日朝交渉には可視的な進展はなかった。しかし、金正恩(キム・ジョンウン)政権の成立、安倍晋三政権の成立を契機に、拉致問題の再調査を求める日本と、制裁解除を求める北朝鮮との間で水面下の交渉が行われるようになり、ついに14年5月29日、スウェーデンのストックホルムで日朝間の合意が発表された。このストックホルム合意は、拉致問題のみならず、遺骨墓地問題、日本人配偶者問題、行方不明者問題という四つの問題を北朝鮮が特別調査委員会で調査する代わりに、日本が制裁の一部解除を行うというものであり、日朝関係の最大の懸案であった拉致問題に関して、また日朝国交正常化交渉にも進展が見られるのではないかという期待が高まった。その一環として10月には伊原純一外務省アジア大洋州局長を団長とする代表団が訪朝し、特別調査委員会からのヒアリングを行った。しかし、合意から1年半以上経過した時点で、可視的な進展はない。あくまで拉致問題の再調査を最優先する日本側に対して、北朝鮮側はその他の問題での再調査を優先させ、肝腎の拉致問題の再調査に関しては日本側が満足する回答をすることができないと推察される。15年、上海や大連など中国において局長級の接触が何度か行われ、8月にはマレーシア・クアラルンプールでのARF(ASEAN地域フォーラム)で外相会談も開催された。拉致問題に関する新たな事実が明らかにされるなど、北朝鮮の報告が日本の満足する水準で行われることが望まれるが、現状ではその水準には達しておらず、日本側が報告書の受け取りを拒否している。そうした中、16年初頭の北朝鮮の核実験、ミサイル発射が行われ、それに対する制裁強化へと日本が旋回し、ストックホルム合意は事実上、白紙化された。(→「北朝鮮の核実験(2016年)」)