フィリピンのスールー諸島やミンダナオ島などを中心に活動するイスラム過激派組織。イスラム国家建設を目指して結成されたモロ民族解放戦線(MNLF)が、対話路線に転じたことに反発した勢力が、91年に分離して結成した。国際テロ組織アルカイダから援助を受けたとして、アメリカ政府は97年から「海外テロ組織」の一つに指定している。同じイスラム武装組織モロ・イスラム解放戦線(MILF)やインドネシアのイスラム原理主義過激派組織ジェマー・イスラミア(JI)(→「イスラム主義運動(インドネシア)」)とも連携して、2003年にダバオ空港で爆弾テロ事件を起こし、04年には「ラジャ・ソレイマン・イスラム運動」(RSIM)メンバーとともにマニラ首都圏で貨客船を爆破、100人以上を死亡させた。ほかにもバレンタインデー爆破テロ(05年)、国軍兵士斬首事件(07年)のほか、いくつかの誘拐事件を引き起こしている。14年には「イスラム国」(IS)への忠誠を誓う声明をネットに掲載、15年9月にはサマル島で外国人4人を誘拐した上、身代金が支払われないとして斬首するなど、手口もISをまねている。16年9月2日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(→「ドゥテルテ政権」)の出身地ミンダナオ島のダバオ市のナイトマーケットで爆弾テロを起こして、80人余りの死傷者を出した。17年5月、軍がミンダナオ島マラウィ市で指導者のイスニロン・ハピロン容疑者を拘束しようとしたが、ハピロンが接触を図った別の過激派組織マウテ・グループが市街を占拠。5カ月にわたる大規模な軍事衝突になったが、同年10月、政府はハピロン容疑者とマウテ・グループの指導者オマール(オマル)・マウテとアブドゥラ・マウテの兄弟を殺害したと発表した(マラウィの戦い)。まだ戦闘中だった同年6月から、過激派組織が連携する動きを警戒して、フィリピン政府は隣国のインドネシア、マレーシアとの3国合同で海上、航空での巡視活動を始めている。