2015年12月に訪印した安倍晋三首相とナレンドラ・モディ首相(→「モディ政権」)の間での基本合意を受けて、16年11月のモディ首相訪日時に締結された協定。これでインドへの原子力発電機器や技術の提供が可能になった。日本では、核不拡散条約(NPT)不参加国との協定はこれまでに例がないため、被爆者団体や広島、長崎市長の抗議、さらには日本、インド両国内に強い反対論があった。インドは、07年8月にはアメリカとの間で印米原子力協定(→「インドの原子力開発」)に合意し、軍事目的を除く民生用の施設、燃料、技術への協力を可能にした。さらにこれをベースにして、08年9月には、軍事用施設への査察を抜きにした協力を容認する「インド限定」の措置を国際原子力機関(IAEA)と原子力供給国グループ(NSG)から取り付けた。今回の日印原子力協力協定も、こうした措置が前提であるから、インドの核軍備増強への歯止めを目的とするものではない。日本政府は、協定交渉の過程でインドが核実験を実施した際には協力を停止する旨明示することを目指したとされるが、インド側は「核政策は主権に関わる」としてこれを拒否。最終的には上記NSGの例外措置獲得に際してインド政府が発表した、核実験の自主的停止(モラトリアム)の継続や核兵器の先制不使用などを約束する、いわゆる「約束と行動」声明の順守を協力の前提とする協定付属文書「見解及び了解に関する公文」(公文)を交わした。しかし、インド側は同公文の強制力を否定しているので、協力の内容については将来的に不確定な部分が残っている。