2015年1月のスリランカ大統領選挙で生まれた新政権。現職でスリランカ自由党(SLFP)党首のマヒンダ・ラジャパクサ大統領(→「ラジャパクサ政権」)は、反旗を翻した与党幹事長マイトリパラ・シリセナに敗れた。シリセナは統一国民党(UNP)の党首ラニル・ウィクラマシンハを首相として、続く8月の総選挙でも基盤を固め、両党からなる国民統一内閣を組織している。ラジャパクサ政権は09年5月にタミル人分離主義派のタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)を制圧して26年にわたるスリランカ内戦を終わらせ、根強い人気を誇っていたが、兄弟をはじめとする閥族優遇と汚職、選挙の暴力化、司法介入、メディアの弾圧などによって次第に国民の離反を招いた。外交的にはコロンボ、ハンバントタの港湾開発などに中国からの多額の借款を仰ぎ、中国偏重が指摘されていた。第18次憲法改正で任期を6年に延長したが、それを前倒しにした15年1月の大統領選では、野党や市民勢力だけでなく、与党内部でも元大統領チャンドリカ・クマラトゥンガらがラジャパクサ政権の長期化に危機感を抱いてシリセナを擁立した。シリセナ政権の下では、大統領任期を5年に戻す、大統領の三選禁止の復活などを内容とする第19次憲法改正、大統領権限の削減、北部タミル人地域の復興、内戦時の国軍による残虐行為の調査、中国偏重外交の是正などが取り組まれているが、軍やいまだにスリランカ自由党の中で影響力のあるラジャパクサ派の存在など、シリセナ政権の前に立ちはだかる障害は大きい。中国は、中国資本でコロンボ沖を埋め立てて総合商業エリアを開発する「コロンボ・ポート・シティ計画」など、前政権期のプロジェクトの継続を求め、インドもまた政権交代を機に影響力の強化を図っており、国際的なかじ取りも課題である。