2015年12月6日、ベネズエラ・ボリバル共和国で行われた国会議員選挙。反チャベス派の野党連合(MUD)が167議席中112議席を獲得し、1999年のウゴ・チャベス大統領就任以来、あらゆる政治の場を支配してきたチャベス派の与党に大勝した。また、単なる議席数だけではなく、例えばバリナス州や首都カラカスの貧困地区など、チャベス派が圧倒的に有利とされてきた選挙区で有力な与党候補者が次々と敗北した点に、前政権の求心力の低下が如実に表われていた。この野党連合の大勝は世論調査からも予想されていたが、それよりも多くの国民を驚かせたのは、ニコラス・マドゥロ大統領をはじめとする与党関係者が選挙での「敗北」をあっさりと認めたことであった。その背景には、国防軍および国防大臣の意向が、重要な役割を握っていたことが指摘されている。
結果的に野党連合は全議席の3分の2以上を獲得し、憲法で議会に与えられたあらゆる権限を行使できるようになった。重要なものでは国会議長の選出と各種委員会の編成、通常法の制定と改廃、政治犯への恩赦、副大統領および閣僚への不信任動議、大統領に絶大な権力を与える大統領授権法の承認または否認、中央選挙管理委員会メンバーの任命、国民投票の実施、最高裁判所裁判官の任命、制憲議会の招集などがある。ベネズエラは「ハイパー大統領制」と揶揄されるほど大統領の権限が強力であるが、それは大統領の意向に沿って国会が法律や授権法を成立させ、同じくそれを忖度した最高裁判所が法律の合憲性を担保する「システム」で維持されてきた。しかしそうしたシステムが崩壊したことから、反チャベス派の立法府と、依然チャベス派が牛耳る執政および司法府との間で、国会が制定した法律や大統領の罷免をめぐって激しい争いが繰り広げられている。