欧州連合(EU)やアメリカは、ウクライナ危機発生直後の2014年3月より、ロシアの「力による現状変更」や、事態の鎮静化に向けた姿勢の欠如を理由に、ロシア政府要人の渡航制限・資産凍結などに着手した。EUはさらにクリミア原産品の輸入禁止などの措置もとっている。アメリカは、同年4月の和平合意(→「欧・米・ロ・ウクライナの4者協議共同声明」)が暗礁に乗り上げると、ロシア国営石油企業ロスネフチなど大手エネルギー企業幹部の国外資産凍結や米欧への渡航禁止といった措置に出た。同年7月、オランダをはじめとする多数の欧米国籍者の犠牲を出したマレーシア航空機撃墜事故を機に、EUおよびアメリカはロシアからの債権・株式購入、兵器取引の禁止、パイプライン関連製品の輸出の事前許可制を導入し、その後もこれらの措置を延長している。日本もG7のメンバーとして段階的に制裁を行っているが、発動時期や厳格さの点で欧米と比べて劣っている。また、16年12月のプーチン大統領訪日を機に、ロシア人向けの査証要件を緩和したように、実質的な制裁緩和となる措置に転じている。ロシアは欧米からの農作物輸入制限などの対抗措置を取っているが、外国投資も減少するなか、原油安と相まって経済に悪影響を及ぼしている(→「ルーブル大幅下落(2014年)」)。16年12月末、離任間際のオバマ・アメリカ大統領は、ウクライナ危機への対処とは別の文脈で、ロシア側からのアメリカ大統領選挙戦中のサイバー攻撃へ対抗して、スパイ疑惑のあるロシア人35人の国外退去と、二つのロシア情報機関への制裁を発動。冷戦期さながらの大国間の対立関係が続いている。