新疆ウイグル自治区における武装抗争には、近年、(1)地理的な拡散、(2)対象の無差別化、といった変質がみられる。2013年10月に北京で起きた天安門車両突入・炎上事件は、ウイグル人の不満分子による活動が中国各地に拡散していることを如実に示したが、14年3月1日には、中国南部の雲南省昆明市でウイグル人武装グループによる市民への無差別殺傷事件が発生。イスラム過激主義に傾倒するウイグル人が雲南省や広西チワン族自治区から東南アジアに抜け、トルコを経由して過激派組織「イスラム国」(IS)に加わっているのではないかと危惧(きぐ)されている。一方で、4月30日にはウルムチ市の南駅で爆破事件が、5月22日には同市の朝市で自動車の突入・自爆事件が発生。多数の死傷者には漢族だけでなくウイグル人も含まれていた。治安当局や政府庁舎など、攻撃の標的がおおむねはっきりしていたこれまでの事件と異なり、ウイグル人武装集団による襲撃事件は無差別化・テロ化しつつある。14年をつうじて、ウルムチ以外でも、自治区南部のアクス、カシュガル、ホータン地区などで武装抗争や襲撃事件が頻発した。中国政府はこれら事件を、自治区独立を目指すとされる武装組織「東トルキスタン・イスラム運動」が背後で暗躍する組織的テロ事件と捉え、5月末には1年という期間で「暴力テロ活動取り締まり行動」を開始。力を力で抑え込む姿勢をより一層鮮明に示している。