人間の生殖に関する科学的知識を学び、男女平等や共生のための意識や理解を育み、望ましい性行動、性関係を選択する自立的、自己決定能力の基礎を育てる教育。男女のよりよい関係を築くために、幼児期から子どもの発達段階に合わせて行われる。性行動の実態調査では、キス経験は大学生では男女ともに7割弱、高校生で約4割、中学生で1.5割、セックス経験は大学生5割強、高校生2割強、中学生はほぼ0.5割弱であり、中高生では女子の経験者が男子を若干上回る(日本性教育協会「青少年の性行動全国調査」2012年)。高・大学生は05年度の同調査より下落に転じた。性行為が若年化し、人工妊娠中絶、デートDV、売買春、援助交際、エイズ感染、セクシュアルハラスメントなど多様な性問題が存在するなかで、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)を基礎においた、性的指向の多様性や男女平等視点からの性教育が重要であるが、教育現場の取り組みにはかなりばらつきがある。障害児の性教育も重要な課題であるが、03年東京都の養護学校で行われた性教育が都議会で「不適切な性教育である」と取り上げられ、教職員が処罰された(七生養護学校事件)。養護学校側は、適切な教育であったとして処分撤回を求め、05年東京地方裁判所に提訴、同地裁は09年3月、都や都議らに210万円の賠償支払いを命じた。東京高等裁判所は11年9月に一審判決を支持、13年11月には最高裁判所が上告を棄却し、一、二審が確定した。同養護学校の校長が03年に降格と停職の処分を受けたことが不法だとして取り消しを求めた訴訟では、最高裁は10年2月に都側の上告を棄却、司法の場では養護学校側の主張が認められた。