東京都が築地市場(中央区)の移転を予定している豊洲地区(江東区)で、土壌汚染が見つかり、市場の再整備か移転かで揺れている問題。築地卸売市場の老朽化と狭さに加え、アスベストが耐火材に使われていることなどを理由に、都は2001年12月、市場を豊洲埠頭にある約40ヘクタールの土地に移転することを決めた。14年12月開場を目指すとしたが、仲卸団体や中央区が現市場の再整備を希望して反対した。土壌調査の結果、移転予定地からベンゼンが国の環境基準の4万3000倍、シアン化合物が同930倍検出された。土地所有者である東京ガスの工場は1988年に廃止されたため、土壌汚染対策法(2003年施行)の適用外。09年の都議選で移転に反対する民主党が第一党になり、同年9月、赤松広隆農水相(当時)が移転先土壌の安全が確認され、納得しなければ卸売市場法に基づく許認可をしない旨の発言をした。都は移転総事業費4316億円のうち586億円をかけて汚染土壌を除去するとし、10年に土壌の無害化実験をおこなって環境基準以下になったと報告した。移転に反対する仲卸業者らは、都の調査結果を科学的に検証するにはサンプルが不可欠と主張し、都に土壌サンプルの廃棄差し止めと損害賠償を求めて提訴。東京地裁は11年12月、原告の請求を棄却した。都の説明不足を理由とした損害賠償請求も退けた。