贈与は、無償により財産やサービスが移転すること。受贈者は税金を納める担税力があるので、贈与税が課税される。ただし、個人から個人に対する贈与の場合に限る。法人から個人に贈与があった場合は、受贈者に所得税を課す。贈与税は相続税逃れを牽制(けんせい)する税として位置付けられる。生前贈与により財産を子どもに移転すれば相続税が課税できなくなるからである。したがって、贈与税の基礎控除額は110万円と低く、相続税よりも税負担が大きくなるような税率構造になっている。しかし、日本の高齢化は進んでおり、被相続人(親)が80歳代、相続人(子)が60歳代という状態が今後続くと予想されている。生前にする贈与には高い贈与税が課税されるので、親は死亡するまで財産を持ち続ける。子は60歳代で親の財産を相続しても子育てやマイホームの取得などが終わっており、使い道はない。したがって、相続した財産を死亡する80歳代まで持ち続ける。日本経済の活性化という視点からは、世代間の財産移転を促進する施策が必要であり、贈与税の課税のあり方が問題になる。そこで、政府はこれまでの相続税と贈与税の関係を維持しつつ、贈与目的を限定して贈与税を課税しない特例を設けている。「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」や、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」がこの考え方に基づくもの。相続時精算課税制度もこの考え方に基づいている。さらに、13年度の税制改正で高齢者の財産の移転を促進するため20歳以上の子や孫が両親や祖父母から贈与を受ける場合の贈与税の税率とその他の場合の贈与税の税率を区分した。15年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する。半面、このような贈与税の特例は、財産を多く持っている階層とそうでない階層の固定化につながるという弊害も生じる。贈与税は1月1日から12月31日までに受けた贈与について、翌年2月1日から3月15日の間に申告して納付する必要がある。