「公的年金等」とは、国民年金法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法などに基づく年金、企業年金などのこと。公的年金等は、その収入金額から必要経費を控除した金額が課税の対象になる。本来であれば、必要経費は加入者が支払った掛金のうち、受取額に対応するものになる。しかし、加入者は掛金を支払った時に社会保険料控除として所得から控除を受けている。したがって、税の本来の理論からは、受け取った公的年金等の全額を課税の対象にしなければならない。ただし、公的年金等は高齢者の生活資金として位置付けられているので、受取額の全額を課税の対象にしない措置が講じられている。これを必要経費に相当する公的年金等控除という。65歳未満と65歳以上に区分して控除額を定めているが、いずれについても定額控除と定率控除の合計とされている。
2018年度の税制改正前の定額控除額は50万円。これとは別に、少額の公的年金等の受給者に対して最低保証控除額を定めており、65歳未満の人は70万円、65歳以上の人は120万円。
18年度の税制改正では、高齢社会がますます進むなかで、裕福な高齢者にはこれまで以上の税の負担を求めることにした。具体的には、定額控除額は一律に10万円を引き下げて40万円、最低保証控除額は65歳未満の人は60万円、65歳以上の人は110万円とする。ただし、年所得が2400万円(給与年収2595万円)以下の人は基礎控除額を10万円増加させる(改正前38万円、改正後48万円)ので、2つを通算すると、控除額は改正前と変わらない。定率控除については、公的年金等の収入金額が1000万円を超える場合は155万5000円とする。定額控除の40万円と合わせると195万5000円となり、これ以上の控除は認められなくなる。
また、不動産所得や給与所得など、公的年金等以外の所得が高額な人についての特例も設けられた。まず、公的年金等以外の所得が1000万円超え2000万円以下の場合は、定額控除を30万円、最低保証控除額を65歳未満の人は50万円、65歳以上の人は100万円に引き下げる。公的年金等以外の所得が2000万円を超える場合は、定額控除を20万円、最低保証控除額を65歳未満の人は40万円、65歳以上の人は90万円に引き下げる。これらとは別に、給与所得控除後の給与等と公的年金等の所得がある人については、所得金額調整控除がある。(→「給与所得控除」「所得税の基礎控除」「所得金額調整控除」)