2007年5月の国会審議において、社会保険庁のオンライン化したデータにミスや不備が多いことなどが明らかになり、社会保険庁による年金記録のずさんな管理が社会問題となった。年金記録の問題は、「宙に浮いた年金」「消えた年金」「改ざんされた年金」と、原因によって大きく分類できるが、被保険者や年金受給者の年金額が減額されるなどの不利益が発生することになる。年金記録問題に対応するために、政府は、データの統合・復元に着手した。まず、コンピューター上の名寄せ作業を行ったが、公約の08年3月までに作業を終了させることはできなかった。一方、「ねんきん定期便」などを国民に通知し、国民自らの確認協力を求めている。また、年金額が減額されたり、受給できなかった被保険者や年金受給者を救済するために、政府は、個別の記録の回復と時効で消滅した年金の補償を行っている。記録の回復については、政府は07年6月「年金記録確認第三者委員会」を設置し、本人にも証拠がない場合には、年金を支給するかどうかの総合的な判断を行うことになった。加えて、7月に発足した地方第三者委員会は、申し立てについて、公正な判断を行い、あっせんを行っている。さらに、年金受給権は、従来は申請しないと5年の時効で消滅することになっていたが、 年金記録の未統合によって年金を申請できず、時効で消滅した年金については、07年6月に年金時効特例法が成立し、受給できることとなった。また、厚生年金特例法により、事業主が従業員から保険料を給与天引きしていたにもかかわらず、その納付を行っていなかった場合には、給与天引きがあったことが第三者委員会で認定されれば、厚生年金の額に反映されることとなった。このような年金記録の問題発生の経緯、原因、責任を調査・検証するために総務省に設置された年金記録問題検証委員会は、07年10月に報告書を公表し、(1)厚生労働省・社会保険庁の使命感・責任感の欠如、(2)社会保険庁の年金記録の正確性確保のための認識不足、(3)裁定時に記録を結合できればよいという裁定主義に、問題発生の原因があるとまとめている。