胃腸、すい臓など腹部の消化器と脾臓(ひぞう)に送られた血液は、毛細血管を通って門脈という静脈に集まって肝臓に送られ、そこで再び毛細血管を通り、肝静脈を通って下大静脈に入る。このように、2つの毛細血管網の間をつなぐ静脈を広い意味で門脈といい、その代表的なものが、肝臓に注ぐ門脈である。このほか、視床下部と下垂体前葉をつなぐ下垂体門脈系も知られている。肝臓の門脈は、消化管で吸収された栄養を、肝臓へ集中的に運ぶ役割をしている。とくに血糖とも呼ばれるグルコースは、人体の細胞にとって最も使いやすいエネルギー源であり、血液中のグルコース濃度(血糖値)はできる限り一定に保つ必要がある。食後に大量に吸収されたグルコースは、門脈を通して肝臓に運ばれ、そこで一時的に貯蔵することで血糖値の調節を行っている。肝硬変により肝臓内の毛細血管が通りにくくなると、門脈圧亢進症を起こす。この時、門脈の血液は肝臓を通らず、食道静脈などの迂回路を通して大静脈に戻るようになる。