鼻の中や皮膚に常在する細菌。名称は、ブドウの房のような形で増えることに由来する。傷ややけどの傷口に侵入して化膿性皮膚炎を起こしたり、食物に大量混入して胃腸炎(食中毒)、尿路炎などを起こすことがある。特に黄色ブドウ球菌は、人の細胞を破壊するたんぱく質(毒素)を産生して病気を起こさせる。加熱処理で死滅するが、毒素は耐熱性である。食中毒は食後数時間後に、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢症状が起こるが、重篤になることは少なく、数時間から2日で改善する。近年、感染症の治療薬である抗生物質の耐性菌が出現し、院内感染などを招いて社会的にも大きな問題となった。この菌の毒素は、ショック症状を起こすことも知られており、常在菌でありながら体内へ侵入すると死を招くほどの重篤な状態になる。