薬剤耐性遺伝子の一つ。臨床的に汎用されているベータラクタム系の抗生物質を切断・不活化させる酵素の基質特異性が拡張し、あらゆる抗菌剤に対する耐性を獲得させる。近年、各種抗菌薬の中で「最後の頼みの綱」といわれる強力なカルバペネム系抗菌剤に対して、耐性を獲得した細菌が世界中に蔓延(まんえん)しつつあり、日本でも2014年に存在が確認された。この遺伝子は、フランス領ギアナ(Guiana)で初めて分離された。腸内細菌科の細菌、特に肺炎桿菌(かんきん)や緑膿菌にこれらの遺伝子が見つかり、抗生物質が効かず重症化する例が相次ぎ、医療現場で懸念が広がっている。日本では、バンコマイシン耐性腸球菌、薬剤耐性アシネトバクターに比べても分離される頻度が高い。その症例の死亡率は10~40%に達することから、医療機関における院内感染対策がきわめて重要である。薬剤耐性菌は血液、腹水、髄液などの本来、無菌的であるべき部位より分離されている。