アフリカや中南米などの、北緯15度~南緯15度の赤道部周辺で流行が確認されているウイルス感染症。黄熱病ともいう。蚊が媒介する熱帯病で、感染宿主はヒトとサルである。病原体の黄熱ウイルスをもった蚊に刺されて感染すると、1週間以内に発熱、頭痛、吐き気、おう吐が出現し、軽症例では数日で回復する。重症例では黄疸、鼻出血などの出血、タンパク尿をきたし、致死率は20%を超えるといわれる。発症者への特異的な治療法はないが、生ワクチンは副作用もなく、感染阻止に最も有効である。そのため流行地への渡航に、ワクチン接種の証明書提出を求める国も少なくない。日本では、検疫所でワクチン接種ができる。黄熱ウイルスを媒介する蚊は、日本脳炎ウイルスなどを媒介するそれとは異なり、アジアと太平洋地域で黄熱病が流行したことはない。日本人細菌学者の野口英世が、この黄熱病を研究中にガーナで死に至ったことは有名である。一方、現在の黄熱ワクチンの開発者である南アフリカ共和国のウイルス学者マックス・タイラーは、人類へのきわめて大きな貢献者として1951年のノーベル医学・生理学賞を受賞した。