心臓の筋肉の収縮が悪くなり、心臓が拡張してしまう病気。1万人に1人以下とまれだが、心不全や不整脈を起こして死亡することもある。やや男性に多い傾向がある。原因は、複数考えられているが、遺伝性以外のものはウイルス感染症後の自己免疫異常によるものが注目されており、実に85%の症例で何らかの抗心筋自己抗体が検出される。治療は、安静および薬物治療(β遮断薬など)を中心として行われる。重症では心臓移植以外には方法がないとされていたが、国内では心臓移植を受けられる機会が非常に限られていること、治療には多額の費用がかかること、小児の臓器移植制限(2010年7月に法改正)など治療への壁が問題となっている。ただし近年、自己免疫異常に着目して、抗心筋自己抗体を取り除く免疫吸着療法の臨床治験が、国内でも進められている。自己抗体を持つ患者に免疫吸着療法を行うと、著明に症状を改善することが報告されつつあり、心臓移植を必要とする患者に光が射しはじめている。