所得、職業、住んでいる地域などの社会背景によって、健康状態や医療の質に格差が生じること。国民の受けられる医療が公平な国と考えられてきた日本でも、健康格差の存在が大きいことがわかってきた。社会的に下位の集団は、がん、生活習慣病、うつ病などの有病率や死亡率が高いだけでなく、病院の受診を控えたり、健康診断の受診率が低いといった、医療へのアクセスの格差も見られる。地域の絆(ソーシャル・キャピタル)が豊かな地域では、主観的健康感が良好で死亡率も低い。また、子どもが胎児期から幼少期にかけて低栄養やストレスにさらされると、悪影響は長期におよび、死亡率が高いことが海外の研究でわかっている。このように個人の努力以外の要因が格差を生んでおり、健康問題を「自己責任」だけで片付けることはできない。2012年に改訂された「第2次健康日本21」では、「健康寿命の延伸」と並んで「健康格差の縮小」が基本方針に加えられるなど、国も格差是正に乗り出しているが、自治体、コミュニティーなど社会全体として取り組む必要がある課題である。