慢性的な下痢は、胃腸の働きが悪いために飲食物の消化吸収が滞り、水分代謝に問題がある場合に起こりやすい。漢方医学的には、血液以外のリンパ液などを指す水(すい)の働きが悪いと下痢が起こりやすい、と考える。この場合は、水のめぐりを調節する五苓散(ごれいさん)が代表的な処方である。また、日頃から下痢をしやすく、腹痛を伴う場合は、生姜(しょうきょう)、芍薬(しゃくやく)、シナモン、ナツメなどを含む桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や小建中湯(しょうけんちゅうとう)などが用いられる。冷たい飲食物などによって腹が冷えると、下痢が顕著になる場合は、温めることが大切であり、人参湯(にんじんとう)や真武湯(しんぶとう)などが使用される。冷えると腹にガスがたまり、腹痛をともなうときは大建中湯(だいけんちゅうとう)が有効な場合がある。そのほかストレスによって下痢を起こすこともある。この場合は下痢に対する処方だけでなく、原因となるストレスにも考慮することが大切である。たとえば、抗ストレス作用のある柴胡(さいこ)を含む柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)などを併用することもある。