がん治療には、患者の免疫力向上による再発防止策が欠かせない。漢方医学では、生命活動を営むエネルギーを気(き)といい、防衛機能=免疫力に関係する。そこで、朝鮮人参(ちょうせんにんじん)や黄耆(おうぎ)など、気を補って免疫力を向上させる生薬を含む漢方薬が注目されている。代表的なものは、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などで、各自の体質や症状に応じて処方される。こうした漢方薬を服用すると、再発までの期間が無治療群と比べて、有意に延長されたと報告されている。また、漢方治療とがん化学療法とを併用したほうが、化学療法単独よりも、生存期間の延長が期待できるという意見もある。さらに、がんの罹患(りかん)にともなう、不安や抑うつなどの精神的な症状も、免疫力を低下させる要因になる。漢方薬では、厚朴(こうぼく)、紫蘇葉(そよう)、枳実(きじつ)など、気のめぐりをよくする生薬もあり、必要に応じて加味する。