更年期を終えた55歳ぐらい以降を、ポスト更年期と呼ぶ。漢方医学では、加齢にともなって、体の新陳代謝が活発な状態の陽(よう)から新陳代謝が低下する状態の陰(いん)へ、また、疲れにくく胃腸が丈夫な実(じつ)から疲れやすく胃腸が弱い虚(きょ)の状態へ変化する時期と考える。このため、ポスト更年期では、陰と虚に対するケアが大切である。陰では体は冷えやすく、虚では体力が低下している。真武湯(しんぶとう)や六君子湯(りっくんしとう)などは体を温め、胃腸の機能を高めて元気にする漢方薬である。また、免疫力の低下で、風邪をひきやすく、いったんひくと治りにくくなるのもこの時期の特徴である。免疫力を高める効果がある朝鮮人参(ちょうせんにんじん)や黄耆(おうぎ)などの生薬が含まれる漢方薬も使用される。例えば、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、基礎実験で体内の免疫系物質(インターフェロンや炎症性サイトカイン)などを調節して、風邪やインフルエンザに感染しないように体の防御機能を高める効果が報告されている。