過敏性腸症候群とは、大腸を中心とした消化管の機能異常により、排便にともなう腹痛や腹部不快感、あるいは下痢、便秘などの便通異常を慢性的に訴える症候群である。たとえば、試験や満員電車などでストレスを感じると、突然の下痢に襲われるなどの排便異常が見られることもある。漢方では、胃腸の働きを整え、腹痛をともない、下痢および便秘にも用いることができる桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)を中心に処方する。便秘型の場合は、桂枝加芍薬湯に瀉下(しゃげ)効果のある大黄(だいおう)が追加された桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)が用いられることが多い。下痢型では、五苓散(ごれいさん)や、冷えが強い場合は真武湯(しんぶとう)などを使用する。さらに、過敏性腸症候群はストレスの関与が背景にあることが多いため、胃腸の働きを整えるだけでなく、ストレスによって働きの悪くなった気(き ; 生命活動を営むエネルギー)のめぐりをよくする治療を同時に行う場合もある。