冷えは女性に多い不定愁訴であり、感じるか否かは個人差が大きい。たとえば、手足が冷たいのにあまり自覚しない人もいれば、手足が温かくても強い冷えを訴える人もいる。このように、自覚症状と他覚症状で乖離(かいり)が見られることがある。手足に触れてみて、他覚的に冷えが認められる場合は、当帰(とうき)や桂枝(けいし)など、体を温めて血行をよくする生薬を含む、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などが適用となる。また、冷えて腹部ガスがたまりやすく、便秘や下痢をしやすい人には、生姜(しょうきょう)や山椒(さんしょう)を含む大建中湯(だいけんちゅうとう)などが使用される。全身の冷えが著しく、寒けや頭痛などをともないやすい場合は、附子(ぶし)を含む麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、真武湯(しんぶとう)などを考慮する。手足が温かくても強い冷えを訴える場合、精神的な要因や自律神経系の乱れが関与していて、体を温めたり血行を改善するだけでは軽快しないこともある。その場合は、自律神経の働きを整えたり、精神的アプローチによる治療も検討される。