腰痛は誰にも起こりうる不調だが、その多くは原因不明である。漢方では、腎(じん)の働きの衰えである、腎虚(じんきょ)との関連が大きいと考える。腎は西洋医学的な腎臓を意味するほか、親から受け継いだ気(き)のエネルギーを蓄え、成長、発育、老化、内分泌機能や骨の働きなどにも関与する概念である。腎の働きが悪くなると、腰痛、頻尿、白髪、難聴、足腰の疲れなど、老化に密接した症状が現れる。漢方薬では、腎の働きを補う八味地黄丸(はちみじおうがん)が代表的な処方。加齢に伴う腰痛だけでなく、若い人でも疲れが蓄積し、腰が重だるい、といった時に有効である。前者の場合は比較的長期にわたって処方するが、後者の場合は少量の短期間服用で症状が軽快することも多い。腰痛に加えて、しびれ、下肢の神経痛が強い場合は、八味地黄丸に血行をよくする牛膝(ごしつ)と利水効果のある車前子(しゃぜんし)を追加した、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが用いられる。