痒みは皮膚疾患だけでなく、肝臓や腎臓などの内臓疾患、悪性腫瘍によっても起こる。したがって対症治療だけでなく、原因を知ることも大切である。漢方医学では、気温や季節も痒みの因子と考える。特に強い季節風は、体におよぼす影響が問題になる。花粉、砂、ほこり、微粒子などが、風にのって体を刺激し、風邪(ふうじゃ ; 六淫と呼ばれる病気の原因の一つ)となる。風邪による影響は、刺激物に直接触れやすい皮膚に現れ、痒みを生じさせる。皮膚疾患がない人でも、外出から帰ったら、手や顔を洗う習慣をつけることは大切である。漢方薬では、痒みを軽減させる防風(ぼうふう)や荊芥(けいがい)などを含む、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、消風散(しょうふうさん)などが、皮疹の形状や患者の体質によって使い分けられる。また乾燥、すなわち燥邪(そうじゃ ; 六淫の一つ)によっても痒みが生じる。この場合、オイルやクリームで保湿するだけでなく、体の中からも潤いを与えるとより鎮静される。例えば、皮膚に潤いを与える地黄(じおう)を含む六味丸(ろくみがん)、血行をよくする当帰(とうき)や川キュウ(せんきゅう)が入った当帰飲子(とうきいんし)なども用いられる。ストレスなどでいらつく時にも、皮膚に痒みが生じる。そのような場合には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などを用いると、症状だけでなく気持ちも落ち着く場合がある。