原子力発電所の場合、地震による大事故を想定し、耐震設計審査指針に基づいた安全審査がなされてきた。従来の指針は1981年に制定されたもので、地震に対する新知見は反映されないままきていた。そのため、運転を始めたばかりの北陸電力の志賀原発2号機は金沢地裁から運転の差し止めを命じられた。2007年3月に、旧指針の策定以降急速に認められてきた断層モデルを使う新指針が策定されたが、直後の4月に能登半島沖地震が起き、従来の考え方が誤っていたことが事実で示された。さらに、7月16日には新潟県中越沖地震が起き、柏崎刈羽原子力発電所が限界地震として想定していたM6.5を超えるM6.8(M6.5の約3倍)の地震が起き、劣悪な地盤も相まって、想定した3倍以上の揺れに襲われた。せっかく制定されたばかりの新指針の見直しすらが、検討され始めている。また、新指針では、従来の「設計用最強地震:S1」と「設計用限界地震:S2」を「基準地震動:Ss」という想定に統合し、それを上回る地震が起きる可能性については、確率論的安全評価を行うよう改められた。
2011年11月には、新潟工科大学、原子力安全基盤機構(JNES ; Japan Nuclear Energy Safety Organization)、東京電力による産学官連携施設の「原子力耐震・構造研究センター」が新潟県柏崎市の同大学敷地内に完成。地震に関するデータの収集や解析、原子力発電所の設備や建物の耐震構造に関する研究を行う。