核分裂反応で発生するエネルギーを利用して発電するシステム。軽水炉、高速炉などさまざまな型の原子炉が利用されているが、若干の例外を除いて、それらは最終的には蒸気を発生させ、タービンを回す蒸気機関である。炉内で発生するエネルギーを熱出力(thermal output)、そのうち電気に変換されるエネルギーを電気出力(electric output)と呼ぶ。燃料の健全性の制約からタービンに送られる蒸気温度が280℃程度でしかないため、熱機関としての効率は悪く、熱効率は33%でしかない。したがって、発生させたエネルギーの約7割を環境に捨てざるを得ない。もし都会に建て、熱併給もできるのであれば、熱効率を高めることができるが、原子力発電所を都会に建設することはできない。高温の熱をまず直接製鉄などでの利用に使おうとする高温ガス炉も、技術的、経済的な壁がある。また、もともと核分裂反応を支える資源であるウランは資源量が著しく少ない。非核分裂性のウランを核分裂性のプルトニウムに変えて利用しようとする高速増殖炉が実現する可能性も少なく、核分裂エネルギーは核融合エネルギーが実用化されるまでのつなぎのエネルギーだといわれてきた。
近年、地球温暖化は二酸化炭素(CO2)のせいで、「原子力こそ環境にやさしい」として、原子力をよりいっそう拡大しようとする動きがあり、原子力産業は原子力ルネッサンス(Nuclear Renaissance)と呼んでいる。しかし、経済性、安全性、ウラン資源などの問題があったうえ、11年3月に起きた福島第一原子力発電所事故の影響で、ヨーロッパでの原子力からの撤退は確定した。アメリカでも今後廃炉の時代が来る。中国他、新興諸国が核兵器保有との関連で、今後原子力に参入するであろうが、原子力利用のピークはすでに過ぎた。日本でも、運転開始基数が1970年代では20基、80年代では16基、90年代では15基あったにもかかわらず、2000年代は5基に激減、そのうえ浜岡原子力発電所の2基が廃炉、福島第一原子力発電所では、4基の原子炉が大事故を起こして破壊され、もちろん運転停止した。また、同じ敷地内にある5、6号機も廃炉が決定した。当時の民主党政府は、大間、上関、川内のすでに建設中の原発については、工事停止を求めないものの、新規の計画は認めないとの立場をとった。さらに政府が行ったパブリックコメントでは30年に原発をゼロにする意見が最多であったし、そのうちの多くは即刻ゼロにするというものであった。それを受け、政府は30年代にゼロにする案を示したが、財界の反発で閣議決定ができないまま迷走。そして、12年末の総選挙で圧勝した自民党は、再度また原子力の復興を目指している。川内原発はすでに再稼働され、高浜原発、伊方原発なども相次いで再稼働を目指している。