日本で最初の原子力の専門学科は1956年に東海大学に設置された。以降、旧帝国大学を中心に原子力、原子核工学が続々と誕生し、84年には12大学・大学院に原子力関連学科が存在していた。しかし、それ以降、原子力関連の専門教育機関は激減し、ついには大学から関連する学部がすべて消えてしまった。2005年4月から福井工業大学に新たな学部が誕生したとはいえ、原子力を支える人材育成は窮地に陥っている。産官学は一体となって人材育成に乗り出し、文部科学省と経済産業省は07年度から原子力人材育成プログラムとして財政補助事業を始めた。大学でも金沢、福井工業、東京工業の三大学が日本原子力研究開発機構と提携して「原子力教育大学連携ネットワーク(JNEN ; Japan Nuclear Education Network)」を作った。また、10年11月には、内閣府、文部科学省、経済産業省、外務省の呼びかけのもと、電力会社や研究機関、国公立を中心にした大学や大学院による「原子力人材育成ネットワーク(Nuclear Human Resource Development Network)」を設立。しかし、それまでにも原子力に対する社会的な期待は薄れていたし、11年3月に起きた福島第一原子力発電所事故は、原子力への期待を大きく失わせた。優秀な人材が集まる可能性はほとんどないが、同原発の事故収束、今後次々と廃炉にしなければならない50基を超える原発、さらには膨大に生み出してしまった放射性物質の管理など、専門知識をもった人材は必要である。