原子力発電所も次第に劣化し、寿命が来る。2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故の後、政府は原発の運転は原則として40年を限度とすると定めた。それには例外規定も付されているが、日本国内にはすでに30年以上運転した原発が16基あり、今後次々と運転停止、廃炉作業が待ち受けている。そして、放射能で汚れた原子炉を始末するために採られる方策を廃止措置と呼び、代表的なものに以下の3種類がある。(1)廃炉をそのまま密閉・隔離する方法(密閉隔離方式 mothballing)。(2)解体して、敷地は再利用し、解体した原子炉を放射性廃棄物として別の場所に隔離する方法(解体撤去方式 dismantling ; removal)。(3)そしてその中間に、汚染された構造物を格納容器内にコンクリートなどで密閉する方法(遮蔽隔離方式 entombment)。日本は国土が狭いため、解体撤去方式を取ることになっている。1966年に日本初の原子力発電所として稼働を始めた東海1号機は98年に稼働を停止した。現在、放射能の減衰を待ちながら、周辺部からの解体作業を進めている。解体によって生じる廃棄物は放射能レベルごとに仕分けし、それぞれ適切に管理する建前になっており、最も放射能汚染レベルが低いものは放射性物質としての規制を免除することになっていて、それをクリアランス制度と呼ぶ。また、特殊な廃炉としては、今現在も事故が進行中の福島第一原子力発電所の4基の原子炉がある。それらについては、まず使用済み燃料プールにある使用済み燃料を取り出す必要があり、その後になってはじめて、溶け落ちた燃料を回収できるか否か検討できるようになる。そして、それができたところで、さらにそのあとには、高レベル放射性廃棄物の処分と同様の困難が待っている。