1979年のアメリカのスリーマイル島原子力発電所(TMI ; Three Mile Island nuclear power plant)事故を受け、原発事故で放出される放射性物質の環境における拡散を時々刻々と計算し、住民を被曝から守るとして開発されたコンピューターシミュレーションシステム。開発・維持に130億円以上が投入されたが、2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故のときには、原発事故時にプラントデータを配信する緊急時対策支援システム(ERSS ; Emergency Response Support System)のデータが使用不能になっていたため、放射性物質放出量の条件については仮想事故データなどの仮定を入れて計算した。しかし、その結果はパニックを招くとの判断で、住民の安全にとって重要な情報すらが国民には届けられなかったうえ、自治体が住民避難を計画する参考にも供されなかった。そのため、放射性物質の飛散方向と同じ方向に避難した住民を多く発生させてしまった。一方、事故直後の同年3月14日に、文部科学省は試算結果をアメリカ軍に提供していた。13年12月6日に特定秘密保護法が成立したため、今後、原子力関連の情報はますます秘密とされるであろう。そのうえ、原子力規制委員会は、今後は現場での測定データを重視し、SPEEDIは使わないことにした。しかし、モニタリングポストはまばらにしか配置されておらず、だからこそ、SPEEDIが必要とされたのである。