福島第一原子力発電所事故は、日本におけるこれまでの安全規制が無力であったことを事実として示した。そこで、新たな基準を作らざるを得なくなって作られたのが、原子力規制委員会による「新規制基準」。原子力発電所に対しては、2013年7月8日に施行され、その他の原子力・核施設については同年12月18日に施行された。「新安全基準」とできなかったのは、どんなに注意したところで、リスクをゼロにすることができず、どこかで社会的な妥協を図る必要があるためである。福島第一原発の事故の原因すら明らかになっていないので、新しい基準を作ること自体が無意味に近い。それでも、原子力発電所に対しては、フィルター付きベントを義務化したほか、「過去13万年以内に動いた断層」と定義されていた活断層を「過去40万年前までに動いた跡があれば活断層と認める」ことにしたほか、緊急時対策所の新設、ケーブルの不燃化、津波対策の強化など、遅きに失した対策も義務付けた。また、従来の原子炉立地審査指針に基づいていた設計基準方式が破たんしてしまったため、代わって確率論的安全評価に基づく方式を求める内容に変え、「放射性物質が大量に漏れる重大な事故の発生確率を100万年に1回以下にする」と謳(うた)っている。しかし、それを保証できるような科学は存在せず、規制基準として意味が乏しい。